「婚姻費用は払いたくない」
↑↑別居中の男性の本音ではないでしょうか?
本記事では、婚姻費用の支払いから逃れる方法を真面目に考えていきます。
別居中の婚姻費用から逃れることは可能か?
- 婚姻費用とは?
- 婚姻費用と財産分与の関係
- 婚姻費用の支払いを拒否したらどうなる?
- 婚姻費用の支払いから逃れる方法
- 逃れるより支払った方がお得?
婚姻費用とは?(1)
婚姻費用とは、「別居中に支払う生活費」のことです。
婚姻費用を略して「コンピ」と呼ぶこともあります。
年収が高い側は、年収の低い側に婚姻費用を支払う義務があります。
婚姻費用は、主に以下の3つの要素を考慮して計算します。
- 夫婦の年収差
- 子供の人数
- 支払う側の雇用形態 等
婚姻費用の実際の金額を計算したい方は、以下の記事を参考にしてください。
婚姻費用を簡単に計算できる方法をご紹介しています。
婚姻費用の計算方法離婚準備なう。
婚姻費用と財産分与の関係(2)
「財産分与には応じるが婚姻費用は支払いたくない!」
「離婚に応じない相手が悪い。自分が不利益を被るのは理不尽だ!」
以上の主張は通用するのでしょうか?
結論からいえば、財産分与と婚姻費用には直接的な関係はありません。
例えば、別居前に預貯金を勝手に引き出された上に婚姻費用を請求されたら?
支払う側にとっては、まさに踏んだり蹴ったりの状況です。
貯金を奪われた上に婚姻費用を支払う行為は、盗人に追い銭に等しい行為でしょう。
実は、貯金を奪われた状況でも婚姻費用は支払う義務は消えません。
一見すると理不尽な状況が認められてしまう詳しい理由は以下の記事にまとめています。興味がある方のみ参照してください。
婚姻費用と財産分与の関係離婚準備なう。
さて、これまでの説明で婚姻費用の支払いから逃れる難しさは伝わったと思います。
しかし、婚費費用から逃れることは不可能というわけではありません。
「早く具体的な方法を教えてよ!」という声が聞こえてきそうですがちょっと待ってください。
次に、婚姻費用の支払いを拒否した時に起こることを説明しておきます。
婚姻費用の支払いを拒否したらどうなる?(3)
- 婚姻費用分担調停
- 強制執行
婚姻費用分担調停(3-1)
婚姻費用の支払いを拒否された側はどんな一手にでるでしょうか?
家庭裁判所に「婚姻費用分担調停」を申し立てるのが一般的です。
婚姻費用を支払う側は、家庭裁判所から呼び出しを受けることになります。
初めて裁判所から呼び出されたら「びっくり!」すると思います。
しかも、呼び出される日時は平日に限定されています。
裁判所からの呼び出しを無視しても、最大5万円の過料(罰金)で済みます。
しかし、家庭裁判所の呼び出しを無視することはおススメしません。
なぜならば、受け取る側の一方的な主張だけで支払い額が決まってしまうからです。
そのため、支払う側の予想を大幅に超えた金額で決着することも珍しくありません。
「裁判所の下した結論なのだから、現実的な金額で落ち着く」と考えるのは甘いです。
なぜ婚姻費用は現実的な金額にならないのでしょうか?
その理由はとてもシンプルです↓↓
「負債」や「資産」などのストックが一切考慮されないのです。
つまり、住宅ローン等の借金の支払いがあっても減額されません。
また、相手が資産家であっても減額されることはありません。
「住宅ローン、婚姻費用を二重で支払うのが厳しい」という結果になりうるのです。
あなたが主張すべきことは主張しないと大変な事態を招いてしまうのです。
なお、裁判所は特別な事情がない限り婚姻費用の支払い要求を支持します。
到底納得できないでしょう。
しかし、婚姻費用の支払いから逃れるハードルは高いのが現実です。
強制執行(3-2)
調停・審判で下された婚姻費用の支払い命令に従わなければどうなるでしょうか?
結論からいえば、財産を差し押さえられてしまいます。
目ぼしい財産がなければ、給料の差し押さえられてしまいます。
なお、給料の全額が差し押さえられるわけではありません。
差し押さえられる給料の上限は50%です。
但し、給料の差押えは「金額」の問題におさまりません。
小さな会社であれば、社長や同僚の全員に差押えの事実を知られてしまいます。
社内での人望を失う結果にもなりかねないので注意すべきです。
「やっぱり、婚姻費用から逃れるのは無理なのか。。」と思った方は多いでしょう。
しかし、婚姻費用の支払いから逃れることは全く不可能というわけではありません。
婚姻費用の支払いから逃れる方法(4)
- 働かない
- 転職する
- 自営業になる
- 雲隠れする
働けない(4-1)
働けず収入がないなら、婚姻費用の支払いから逃れられるかもしれません。
むしろ、相手に対して婚姻費用の支払いを要求できる可能性すらあります。
但し、「働かない」という選択肢は有効ではありません。
「働けるのに働かない」と裁判所が判断すれば、婚姻費用の支払い義務は消えません。
転職する(4-2)
転職するのは、有効な手段です。
なぜならば、強制執行先の企業がわからなければ打つ手がないからです。
但し、就職先を気軽な気持ちで変えるのは難しいでしょう。
また、転職先が発覚されれば再び強制執行の憂き目にあいます。
自営業になる(4-3)
自営業になる方法も有効な手段の一つです。
課税対象の収入額を抑えれば、婚姻費用の支払額を抑えることができます。
しかし、婚姻費用の支払いから逃れるために自営業になるのは難しいかもしれません。
雲隠れする(4-4)
失踪するのは、1番有効な手立てです。
但し、元配偶者・子供の前に一生姿を現さない覚悟が必要です。
また、離婚手続きが完了する前に失踪すれば婚姻状態がずっと続く可能性があります。
法律上、3年以上の失踪が認められれば配偶者は離婚する権利があります。
しかし、配偶者が離婚手続きをする保証はないのが難点です。
さて、これまでは婚姻費用から逃れる方法ばかりを解説してきました。
しかし、婚姻費用は支払ってしまった方が得になることもあります。
逃れるより支払った方がお得?(5)
婚姻費用の支払いを拒否すれば、夫婦の信頼関係が破壊されます。
信頼関係が破壊されれば、それだけ離婚協議が長引きます。
離婚協議が長引けば長引くほど、婚姻費用の支払い額は膨れ上がります。
例えば、年収525万円のサラリーマンが専業主婦・子一人に支払う婚姻費用を考えます。
この場合、月々約10万円程度の婚姻費用を支払う必要があります。
婚姻費用の支払いを拒否していたずらに婚姻費用を支払うよりも離婚する方が得です。
婚姻費用の支払いを拒否するという考えに固執することにメリットはありません。
「いかに早く有利な離婚条件を取りまとめるか?」を最優先に考えるのが良いでしょう。