この記事では、厚生労働省による「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」の中身をかいつまんで紹介します。
その結果から「養育費を支払いたくない!」という離婚準備中の男性に向けて、アドバイスをしていきます。
養育費を支払いたくない男性へ
- 養育費の受給率
- 養育費の取り決め状況
養育費の受給率(1)
まずは養育費の受給率についてのデータを紹介します。
上図は文字が小さくて見づらいと思いますから、大事なところだけ抜き出して紹介したいと思います。
- 現在も受給している ⇒ 15世帯(1.7%)
- 過去に受けたことがある ⇒ 70世帯(7.9%)
- 受けたことがない ⇒ 745世帯(84.6%)
- 現在も受給している ⇒ 403世帯(53.3%)
- 過去に受けたことがある ⇒ 194世帯(25.7%)
- 受けたことがない ⇒ 129世帯(17.1%)
養育費の取り決めをしていない母子家庭では、養育費の受給率が1.7%です。養育費を支払いたくないなら、「約束するな」という当たり前の答えが浮かび上がります。
しかし養育費の取り決めをせず離婚するのは極めて難しいのが実情です。これから離婚する女性がチェックしそうな離婚書籍をみれば「離婚する前に養育費の取り決めは絶対にすべき」とアドバイスされています。
また離婚届にも「養育費の取り決めはしましたか?」という趣旨の記載が入るようになりました。ですから「養育費の取り決めはしなければいけないもの」という考えは、離婚する女性の誰もが理解していることです。
実際に離婚により母子家庭になった世帯の46.1%は、離婚時に養育費の取り決めをしているのです。
しかしここで注目すべきは、以下の数字です。
- 現在も受給している ⇒ 53.3%
- 過去に受けたことがある ⇒ 25.7%
- 受けたことがない ⇒ 17.1%
つまり養育費の取り決めをしている世帯であっても、約半数しか養育費を受給していないのです。
離婚時の取り決めをしているにも関わらず「養育費を支払う男性」と「養育費を支払わない男性」がいるのです。果たして、どのような違いがあるのでしょうか?
養育費を支払う男性と、支払っていない男性の違いは、別のデータからうかがい知ることができるので紹介します。
養育費の取り決め状況(2)
厚生労働省の調査では、「養育費の取り決めアリ」と回答した母子家庭世帯に以下のような質問をしています。
- はい(強制執行認諾条項付きの公正証書等) ⇒ 58.3%
- はい(その他文書) ⇒ 15.0%
- いいえ ⇒ 26.3%
- 不詳 ⇒ 0.4%
公正証書とは、全国の公証役場で作成する公文書のこと。
公正証書は、公証人の立ち会いの元、債務者・債権者の双方が内容を確認して完成させます。
公証人の立ち合いの元で作成される公文書のため、高い信頼性が担保されるのが特徴です。
強制執行認諾条項のある公正証書があれば、裁判による手続きをせずに強制執行することが可能になります。
養育費の取り決めをした母子家庭世帯のうち、「強制執行認諾条項付きの公正証書」や、家庭裁判所から発行される「調停証書」や「裁判証書」を作成した母子家庭世帯は58.3%いるのです。
一方で「現在も養育費を受給している」世帯は、53.3%です。以上の結果を踏まえると、以下のように推測することができます。
公文書のある母子家庭は養育費を現在でも受給している一方で、公文書以外の契約書だったり口約束で養育費について取り決めただけの母子家庭は養育費を受給していない。
やはり公文書の威力はすさまじいものがあると改めて感じます。
強制執行認諾条項付きの公正証書があるにも関わらず、養育費を支払わない状況を放置すれば、会社の給与を差し押さえられても文句は言えません。
裁判所から勤め先に「○○さんの給与を差し押さえます」と連絡があれば、トラブルを抱えている事実を会社に知られてしまう事態にまで発展します。
自営業や会社経営者であれば、社長である自分の給与をコントロールするなどして養育費の支払いを渋るなどの対策もできないわけではありません。しかし勤め人には真似できない芸当です。
強制執行認諾条項付きの公正証書がある状態で養育費を支払わないためには、「失踪する」のが一番確実です。しかしすべての縁を断ち切って姿を消すなんて、普通の人には真似できません。
最後に
「養育費を支払いたくないなら○○するな!」が本記事のタイトルでした。
最後に答え合わせをして終わりたいと思います。もうすでに答えはわかっていますよね。○○に入るのは、「強制執行認諾条項付きの公正証書」です。くれぐれもご注意を!
但し、子供に会いたいなどの事情があれば、養育費自体は支払わざるを得ないでしょう。「養育費は支払わないけど、子供には会わせろ!」という主張は、到底受け入れられないでしょう。
離婚するのは両親の問題であり子供に罪はありません。また質のいい教育にはおカネが必要です。大人であれば働いてカネを稼ぐこともできますが、未成年の場合は働いてカネを稼ぐことだけでも大変です。
養育費を支払わないという選択肢は、子供を不幸にする可能性を高くします。そのことだけは忘れてはいけないと思います。