「離婚協議で合意した内容を公正証書にしてください」
離婚する妻のほとんどは、離婚協議の内容を公正証書にすることを希望します。
しかし、男性の多くは以下のような様々な疑問をもつでしょう。
- そもそも公正証書ってなんだ?
- 公正証書は必ず作らなくてはいけないのか?
- 公正証書の作成から逃れることはできないのか? etc
そこで本記事では、上記疑問を解決すための知識を男性目線で解説していきます。
本記事の内容を理解すれば、公正証書を作成すべきか拒否すべきか理解することができます。
公正証書を手っ取り早く理解する解説
本記事は、以下のテーマに沿って公正証書について説明していきます。
- 公正証書とは?
- 公正証書は必ず作らなければならないのか?
- 公正証書を拒否するべきか?
- 公正証書を作成する前に注意すべきこと
公正証書とは?(A)
公正証書とは、「法律の専門家である公証人が公証人法・民法などの法律に従って作成する公文書」のことです。
公文書が単なる契約書と異なるのは、以下の2点です。
- 高い証明力
- 裁判所の判決を待たずに直ちに強制執行できる
高い証明力(A-1)
公正証書は、公正役場という全国に設置された施設で作成を依頼します。
駅前の目立たないビルの一室にあることもあれば、立派なビルに入居していることもあります。
公正役場には、法律に詳しい職員の方たちが勤めており、職員の方に内容を確認されながら公正証書を仕上げることになります。
そのため、公正証書にした時点で「この契約書は偽造されたものだ!」というような主張は通用しません。
公正証書は、当事者同士が内容に合意した上で提出しないと受理されません。
そのため、高い証明力があるのです。
強制執行できる(A-2)
公正証書には、裁判所の判決を待たずに強制執行できるというメリットがあります。
例えば、離婚する際に以下の約束をしたとします。
- 慰謝料を分割して支払う
- 不動産売却の半額を現金で支払う
- 養育費を月○○円支払う(ボーナス月は○○万円上乗せ) 等
もしも、約束が守られなかった場合は、妻は非常に困ります。
なぜならば、約束を守らせるためには、その都度元夫を訴えて裁判所の判決を待つ必要があるからです。
そのような一連の手続きは、非常に面倒です。
一方で、公正証書にしておけば、約束が守られなかった時点で強制執行をすることが可能です。
例えば子供の養育費が支払われなければ、勤め先からの給料を差し押さえることも可能です。
一家の大黒柱だったあなたは「お金を払う側」でしょうし、もしかしたら「親権を受け渡す側」かもしれません。
そのため、強制執行の権利を元妻に持たせることには、強いアレルギーがあると思います。
そこで、次に「公正証書は作成しなければいけないのか?」という点について解説していきます。
公正証書は必ず作らなければならないのか?(B)
結論からいえば、公正証書は必ずしもつくらなければいけないわけではありません。
あくまでも双方の契約ごとですから、離婚する際に必ず必要なわけではありません。
公正証書を作成したくなければ、断固として拒否すべきです。
しかし、あなたが拒否しても大半の妻はそこで諦めないと思います。
もしも、あなたが妻に離婚をお願いする立場だとすれば「公正証書がないと離婚しない」と主張されれば、苦しい立場に追い込まれるでしょう。
- 離婚するか
- 公正証書を用意するか
以上の2択を迫られた時に、公正証書を用意する方を選ぶ人も多いと思います。
公正証書の作成に迷うあなたに対して、妻は以下のように囁いてくるに違いありません。
「約束を破らなければ強制執行されないのよ」
「あなた、もしかして約束を破る気だったの?」
「約束破る気ないわよね?だったら、公正証書があっても大丈夫よね?」
以上のように囁かれれば、「そうだ、男として恥ずかしい態度はとれない」と半ば自分に言い聞かすように公正証書の作成に向けて動き出してしまうでしょう。
確かに、約束を破るつもりでなければ、公正証書を作成しても問題ないように思います。
しかし、男性側の心配事はまだ他にもあると思います。
例えば、公正証書の記載内容で最大の焦点となることが多い養育費について考えてみます。
養育費は、支払う期間が長期間になるため以下のような不安が頭をもたげるでしょう。
- 養育費をずっと支払い続ける自信がない
- 妻が再婚しても養育費の額はかわらないのか?
- 自分が再婚して子供ができたら減額はできるのか? etc
結論からいえば、公正証書で一度取り決めた内容は後から変更をお願いすることも可能です。
しかし、相手の合意もしくは、家庭裁判所での手続きが必要です。
変更内容が相手に不利な条件であれば、よっぽどの理由がなければすんなり受け入れてもらえないでしょう。
そのため、現実的には家庭裁判所で「養育費の減額請求の調停・審判」などを申し立てることになります。
そして、家庭裁判所であなたの主張が正当だと認められれば、減額が認められることになります。
ちなみに、正当な理由とは以下のような理由です。
- 不景気により賃金が大幅に減らされた
- 失業して収入がなくなった
- 転職により収入が減った
- 病気になり傷病手当で生計を立てている
- 再婚相手と子供が生まれた
- 元妻が再婚した
- 元妻が再婚し子供を再婚相手の養子にした
- 元妻が成功して収入が大幅に増加した
- その他扶養関係の変化があったとき
以上のような理由があれば、公正証書の内容は変更できますので気が楽になったかもしれません。
しかし、変更を依頼するときは家庭裁判所への申し立てが必要なのでその点は留意すべきです。
さて、ここまで説明したところで「公正証書を拒否すべきか?」という点を考えます。
公正証書を拒否するべきか?(C)
繰り返しますが、公正証書を作成するかしないかはあくまであなた次第です。
公正証書をつくらなくても離婚できるのであれば、作らないのが無難かもしれません。
例えば、奥さんが離婚したいと主張している上に、公正証書の作成まで要求するのであれば、「公正証書をつくるなら離婚しない」と主張するまでです。
現実に、公正証書を作成しないで離婚する夫婦は多いと言われています。
公正証書を作成する夫婦が少ないことを直接示す統計結果は手元にありません。
しかし、母子家庭で夫から養育費をもらっている家庭が3割程度という実態を踏まえれば、公正証書を作って離婚する夫婦は少ないと推測してもあながち間違ってはいないでしょう。
これまでの説明では、あなたの立場が強い時は公正証書の作成を拒否し、あなたの立場弱い時には公正証書の作成を拒否することが難しいとお伝えしてきました。
では、もしも夫婦の力関係が同等だった場合は、どのように考えればいいでしょうか?
この場合は、あなたが相手に守らせたい約束事があるかないかで判断すると良いと思います。
つまり、相手に守らせたい約束事が重要なものであれば、公正証書の作成に踏み切ってもいいでしょう。
例えば、養育費の支払いを求められる一方で、あなたが子供と交流する権利(以下:面会交流権)を絶対に相手に守らせたいような場合が考えられます。
養育費の支払いだけは教鞭に求めてくるにも関わらず、子供に合わせないという母親も存在することは確かです。
元夫のことを財布にしかみていない妻であれば、面会交流権を守らなかった際のペナルティを強めに設定しましょう。
つまり、公正証書というと相手からの約束事だけを一方的に押し付けられるという意味合いが大きいと感じてしまうと思いますがそうではないということです。
公正証書をつくることは、相手(妻)にとってだけ一方的に有利なものではないことをしっかりと認識してもらいましょう。
さて、ここからは公正証書を作成する上で注意すべきことをお伝えしていきます。
公正証書を作成する前に注意すべきこと(D)
公正証書を作成する前に注意すべきことは、以下の2点です。
- 公正証書があなたに不利な内容でないか
- 公正証書はあくまで離婚届とセット
公正証書があなたに不利な内容でないか(D-1)
公正証書を作るか作らないかで悩んでいるのであれば、協議離婚での離婚を目指しているのでしょう。
一般的に、協議離婚は夫婦の合意の元、離婚届を提出すれば離婚が成立します。
家庭裁判所による調停離婚、裁判離婚と比べれば協議離婚はもっとも手軽に離婚する方法です。
しかし、落とし穴もあります。
それは、相場からかけ離れた相手の要求を受け入れてしまうリスクがあることです。
例えば「離婚によるダメージは男性より女性の方が重い。だから、慰謝料を1,000万円払え」と主張されたらどうしましょう。
あなたに非があって、お金があったら「そんなもんかな。」と納得して支払ってしまうのではないでしょうか。
もしくは、妻の親族から総攻撃されたら根負けして支払ってしまうのではないでしょうか。
または、マイホームの権利をよこせと主張されたら、譲渡してしまう人もいるのではないでしょうか。
以上のような例は、離婚の現場では珍しくありません。
同情したくなる例では、妻からのDVから逃れるために離婚する条件として、20年間にわたる住宅ローンと養育費の支払いを約束した人もいます。
以上のように、家庭裁判所での調停や裁判になっていれば、絶対に負担する必要もない負担を押し付けられて苦しんでいる人がいるのです。
しかも、それらの約束を公正証書にしてしまっています。
相場から逸脱した約束事でも、公正証書にしてしまったら約束を守るしかありません。
同情の余地はあるかもしれませんが、これらは全て当事者本人の無知が招いた悲劇ですから自業自得です。
この記事を読んでいるあなたは、圧倒的に不利な条件で公正証書を作成しないようにしてください。
もしも、公正証書の内容に疑問があれば、専門家に適切な内容か判断を仰ぐことを忘れてないでください。
公正証書はあくまで離婚届とセット(D-2)
公正証書の作成に同意した男性の中には、離婚の条件として乗り気でないながらも公正証書を作成せざるを得なかった方もいると思います。
もしも、そのようなケースに該当する場合には、公正証書作成のかわりに離婚届をもらってください。
「公正証書の作成をしたのに、離婚届は提出できない」という悲劇に陥らないように注意しましょう。